Wednesday, May 11, 2022

小説練習

 生活保護を受けて、半年になります。

わたしはのぼる。どこにでもいる、よくある名前ですが、よく考えれば少年漫画っぽくていい響きの名前ですね。
わたしは、ホテルマンをしていました。

ホテルマン・・・ときいて、下にみる人もいるでしょう。ホテルマンは究極の接客業であり・・・給与はお世辞にも高いとは言えませんが、わたしはわたしなりに誇りを持ってやっていました。

また、わたしのように無数のおびただしいお客様を毎日お出迎えし、もてなす仕事は、沢山のお客様の人生にとっての・・・ある意味では狂言回しのような役割をもっているとも言えるでしょう。

後ろめたい夜を過ごすための、サラリーマンのような方もいらっしゃいました。

反社・・・とみれらる方もいらっしゃいました。ただ、こういった方々はどちらかというと驚くほど丁寧・・・ないし普通の対応をされる方が多く、世間一般で思われているよりは接客業として負担があるわけでは、なかったのです。

やはり、一番苦しかったのは、「普通の見た目をした」「あまり強くなさそうな」お客様でした。

暴力は・・・ある意味では金銭と同じ性質をもっているかもしれません、

こう表現すると誤解されるかもしれませんが、

湯水のように散財すること、安売りをすること・・・これらは貧困のもつある意味典型的でありかつ共通の側面であります。

わたしは、そういったお客様をみてきました。

おそらく水商売の・・・それもかなりハードコアな女性のお客様。

高価な鞄に、ブランド品。

実力以上の、自分自身の実力についてのデモンストレーション。

これらは、まるで子犬がギャンギャン吠えるように、

すなわち、自分の力に自信を持てない・・・そういった押しつぶされそうな対社会の不安を、補完し、自分を大きく見せる・・・

こういったことは、揶揄的な表現のされかたをしますが、自然の中にそういう動物はたくさんいるわけで、

そういった自然の素質を悪く言うつもりは、わたしにはありません。

ただ、暴力団のお客様は、「暴力」を「どこで」「なにに」「どういった目的で」使うかについての定義や、原則がより強く、暴力の安売りはしなかった。

それゆえに、暴力の頂点に・・・といっても警察には勝てませんから、ある意味ではアウトロー的な存在として・・・そこにある意味では美学のようなものがあるのでしょう。様式美ですね。

ただ、横柄なお客様もいらっしゃいます。

横柄なお客様は、本当は弱いお客様がとても多いです。

つまり、自分に対してとても甘いのです。

甘いので、わたしたちのような立場の人間を攻撃することで、自分の輪郭をやっと描けているのかもしれない・・・

そういった、様々なことが、ここでは行われていました。

ある日、わたしはあるサラリーマンのお客様をもてなしました。

この方の個人情報を述べるのは避けますが、本人曰く不動産を所有しているすごい方なんだと。

そして、わたしの対応で、wifiの詳細をお伝えするときにもたついたことについて大声でわたしを叱責されました。

みなさんの前で。

わたしは、この叱責にたえかねて、

どのような謝罪がお客様にふさわしいか、全力で考えたのです。

どうしよう・・・・

どうしよう・・・

そうだ、これはお辞儀でも足りませんし、土下座でもきっと足りないんだ、

私はミジンコのように愚かな存在ですから、そうです、私は独り身で、この前も5年付き合った彼女に口臭が耐えられないという(おそらくは表向きで、実際は私の煮え切らない態度や経済力に愛想をつかしたのだと思いますが)理由で三行半を(結婚してませんけどね)突きつけられ、

そうして、そんな愚かな存在のわたくしの唯一の謝罪。

そう、

お客様のまえで自慰行為を行ったわけです。

お客様の前でズボンをおろし。

わたくしのそれは、そうですね、アイビーリーグの下手な黒人選手よりも大きなものを(なぜか?)もちあわせており、むしろそれくらいしか取り柄がありませんでしたから、

そちらをだしまして、そうですね、

私は「地球」を想像して、いままさにエレクトし、

射精しようとしていたのです。

これでいいのだ。

これでお客様がわたくしを深くお客様の大脳に刻んでいただければ。

ついでに、うんちもだしちゃおう。

そうして、わたくしは無事御用となり、

ホテルからは解雇され、

ホームレスを二年ほど経験したあとにNPOの方にお世話になり

今の生活保護にいきついたわけであります。

皆様、くれぐれも、お気をつけて。




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