Wednesday, October 28, 2020

テキトーにSFかく

※この記事はフィクションです。

よくある風景。例えば、80年代のような少し後進性のある建物やトタン、それから世話焼きのおじさん....
そういったレトロな世界から、ほぼ完全に電子化されたこの時代に産み落ちた。

サイボーグ・ボーイと呼ばれる世代な僕らは、人口減少対策として内閣府が出した指針により、神経系を人口の生体量子回路、とよばれる
第二世代コンピュータ端末に体の細胞を入れ替えることをやるのが普通だった。

はじめは世論はこれに反対したが、如何せん人口が少なすぎた。僕らの今いる2040年は国際情勢も悪化し、(ここで具体的なことをいうのは控えるが)
なんどか戦争も起こった。やはりそういうなかで右派勢力は台頭し、また和魂洋才ならぬ和魂電才のスローガンで、これまでの生命倫理は覆された。

まずクローンが許可された。IPS細胞もより実用化されており、臓器の単体生成も可能になったほか、「人工の人間」が「ファクトリー」という政府公認の機関によって量産されることになった。

ファクトリーで生産された人間は、当初それこそただの「人間」だった。それでも、より高IQの人間や経済的成功者、政治家・スポーツ選手などのDNAを水平展開させるという強い動機が働いたのか、そのようなクラスタの人間から優先的にクローンされた。

クローン後のアフターケアとして(すなわち愛情とか教育とかがなければそもそも劣性なものを世に出すことになるから)「擬似記憶」というプリセットのプログラムを海馬に埋め込む(injection)する技術がロシアのイヴァナチオ・ツロシキーという科学者が理論として提唱したが、これを東京大学が実用化させた。

ままの記憶。

ままに愛され、家族で一緒にピクニック。

授乳から、小学校〜高校まで、これらの記憶は電子的な配列としてセットされ、それを海馬内部でニューロンの組み合わせとして再現させる、その際に「パラメータ」という変数が用意されてあって、そこにランダムな数値(これはまず機械学習によってランダムに生成された親A、親B、またオプションで兄弟の顔と、声、名前、などである)

なぜこのパラメータが必要かというとクローンは、1時間単位で100人生成される。これは、24時間稼働で 1日2400人、1年で 876,000人が生産されるということだ。彼らの記憶がバッティングするというのは、混乱をもたらす。また、これは一つのファクトリーでの話であって、ファクトリーは全国で10箇所あるので、8,760,000人が(これはほぼ1000万人ということだ)生産される。

このクローンは、政府によって公式に人口としてカウントされ、戸籍も与えられる。ただ、一部は右翼政党の利用価値のある「兵隊」として、肉弾戦の道具に使う、というのが政府の意図らしい。それだけこの年には日本国憲法は形骸化していたし、誰も政府には逆らえないでいた。

「ミヤ」

原地が声をかけてきた。同じ秘密警察部隊「日生」の同期である。

「きみは人間なんだってね。こっちがわかとずっと思ってたけど」

「はは。人間じゃないさ。セミ・ヒューマンだよ。だから」

そういって僕はおどけるように壁に蹴りをいれてみた。コンクリートの壁が、大きな爆発音を出した後えぐられるようにめくれた。

「ボーグか!!!」

同期なのになんにもしらねえんだな。

「だって君だってそうするだろう。今の時代人間になんのメリットがあるんだ。ボーグのほうがはるかにやりやすい、寿命ものびるしね。」

なんどかスキップして首をひねってみる。

「人間でもボーグにはなれるよ。公表はされてないけど、部隊では愛国心が評価基準だから、バカな上官をだませばそれなりに優遇されるのさ。ぼくは考課でAもらったから」

「すげえ!」

「まず生体コンバータっていうのを経口薬みたいなので飲む。その後少し意識が遠くなって.... まず血管を人工ワイヤへの置き換えが行われる」

「メス入れないの」

「入れない。医学は進歩したんだよ。一般の人間には公開されてないけどね。この人工ワイヤへの置き換えがおよそ人体へのショックを最小限にするために2週間、その後脳細胞の人工生体コンピュータへの置き換えが一ヶ月」

「歯の矯正より早いな」

「そう。で、筋肉の置き換え、これは最初硬直して悲鳴が出るくらい痛かったけど、これもだいたい1週間。臓器や肛門も人工生体におきかえ」

「そもそも人工生体ってなんだっけ」

「人工生体はA-G-C-Tの遺伝子配列まで生物のそれそっくりの、ただ外部からそれをプログラミング可能な細胞さ。」

「ミトコンドリアもある?」

「擬似ミトコンドリアがある」

「はぇー。」

「脳が置き換わるときに、脳自体はどうなるの」

「例えばこれは時空間集合Xがあったとして、そこにベクターが集まってる。これらをキャプチャして、そこを細胞ひとつひとつ並列処理で焼き切る。焼き切るのと同時にその脳細胞の丸コピの人工生体細胞が置き換わるから、つまり意識も連続してる。シナプスとかも問題ない」

「すごいな」

「それに、この人工生体細胞にはガン、ってのがありえないんだよ。新しくボーグにおきかえるときに中央処理装置が脳梁に組み込まれていて、バグを出した細胞を0.003秒以内にX線で死滅させる」

「その電気はどうするの」

「血液が流れてるから、そのエネルギーを一部貯蔵して作る」

これは実際革命的だった。鉄腕アトムみたく、例えば5メートルくらいだったら軽く飛ぶことができる。

例えば実際の戦闘シーンになったときに、腕が一つ吹っ飛んでも止血は即時に行える。これはそういう処理系が「プログラミング」されているからだ。C++でできているらしい。

ただ、人工生体細胞とはいえ脳がふっとばされたら、終わりだけど。

でも、この人工生体細胞は即時的に硬質化が可能で(進撃の巨人みたいだけど)そもそも骨はセラミックレベルの硬さにすでになっているし、筋肉や皮膚を固めることで今みたいにコンクリートを粉砕することもできる。もちろん、意図しなければ、その肉の感触は、しなやかだ。


続く.... (かもしれない)











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