Friday, March 16, 2018

映画「渇き。」




あらすじ

主人公の藤島は退職ずみの刑事。6日から失踪した娘を探しに駆け回るが、いろんな非行少年グループ、ヤクザ等に巻き込まれ、娘の事実を少しずつ明かしていくうちに、娘が青少年の売春の斡旋を行っていたこと、また、娘が最後には担任の先生に殺されていたことを知る。


感想

全体的に鬱展開作品。カラーとしては韓国のOLD BOYに少し似ている。



粗暴な男が失踪した娘(加奈子)を探すというミッションを課せられる


離婚した元妻との関係性の明示。
また、加奈子の関係者への接触による
- 藤島のキャラクターの明示。
- 加奈子のキャラクターの明示。

「加奈子が超やばいサイコパス」
という結論だけがはじめに提示されている

この結論をつまびらかにするために、証言者が一つ一つ、加奈子に付随する情報を提供していく。(イベント経由か、回想経由か)

- 非行グループへの関与
- 学校の男の子に目をつけ、一人目の犠牲者(すでに自殺して死亡)
- 二番目の犠牲者(二番目の犠牲者のイベントを補佐するためのトリガーとして、一人目の犠牲者とパラレルで提示される)
- 薬物を売っていること
- 男の子(や女の子)の犠牲者に体を売らせていること。
- バックにヤクザとか金持ちのおじさんがいる


- 加奈子は裏の社会のルールを逸脱しており、制裁の対象となっている。
- 二番目の犠牲者は加奈子に惚れるあまり殺人?を犯してしまっている。
- 藤島はヤクザに拉致され、そこで加奈子を拉致している(とここでは思われている)ヤクザを倒すミッションを与えられる
- 実は、担任の娘を加奈子が売春させていたことがわかる。
- 担任が加奈子を殺害していたことがわかる。


- 冬と雪の中に男女がいて不毛なことをやっている大団円
(加奈子の死体を掘り起こそうとする)


世界観
暗い。またコンスタントに人が死んだり、傷つけられたりするイベントが発生するためソフトなグロ系ホラー。


藤島加奈子のキャラクター
ほぼ先天性と思われるサイコパス。社会規範という意味での善悪の区別や、良心の呵責、および人の感情をトレースする機能が欠けており、「愛しているから殺す」という独特のロジックを持っている。利己的で、搾取するためだけに人に近づく(そして搾取する)が、それゆえに虐げられている?系の人間 および 高齢者の男性 を魅了し、思い通りに動かす。

ストーリーの中で気になるところ
藤島が狂言回しの役となっている。
また、藤島の粗暴さが見る人の注意(緊張)を引きつけている。
「加奈子は今生きているのか、死んでいるのか」
「加奈子はどういうキャラクターなのか」
「加奈子はどこにいるのか」
といった疑問を 命題とし、これを様々なイベントを通してつまびらかにする構造になっている。

また、新規に与えられた情報が、前に与えられた情報よりもより広く、完全であるという仕組みも推理系ならではである。

 「いじめられている男の子に唯一優しくしてくれる女の子、加奈子が居た」
「前の彼氏が自殺しており、それを重荷に感じていた影のある少女が加奈子」 (証言から)

ここまでだと加奈子は素敵な健気な、優しい少女に見える。 そのあとに

 「実は前の彼氏は加奈子(強制させるための暴力は不良グループによって分担されている)によって強制的に売春させられていた。そのために自殺した」
「いじめられている男の子も、薬漬けにされ、強制的に売春させられた」

 ここまで見ると、弱っている相手を標的に、表面上の優しさで近づいて、利己的な欲求から自分の利益(快楽、金)のために搾取しようとする。(本当に優しければ身近な人間から順に大切にしていくのが普通なので)

という彼女の人間性が明らかになり、これははじめの情報だけではわからないキャラクターである。

(またこれが後天的にPTSD等の副作用として発現しているのか、ととることもできるが、最後に藤島(役所広司)が「俺の血が流れているから」と言っていたので先天性、と結論付けるべきなのであろう)

まとめ

渇き。には一個前に与える情報を狭めること、その後から肝心な情報を与えていくことで見る人に驚きを与える手法が使用されている。また、主人公は狂言回し的な存在で、周りとのイベントによって情報が加算されていくことではじめの結論をなぞっていく作品であった。全体的なカラーとしては暴力的であり、ホラーの分類だと思われる。

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