
旧教会で「1兆ページ」を守る人々 インターネット・アーカイブの現在地 2025-11-20 サンフランシスコのプレシディオ公園からほど近い一角に、純白の外観に八本のゴシック柱を備えた建物が静かに佇(たたず)む。かつてクリスチャン・サイエンティスト教会として使われていたこの場所は今、世界のデジタル遺産を守る「インターネット・アーカイブ(Internet Archive)」の拠点である。 設立からおよそ30年、ウェブページ1兆件の保存という歴史的節目を迎えた組織の内部では、ステンドグラスが彩る礼拝堂にサーバーの低い唸(うな)りだけが響き、かつての説教の声に代わって世界中の情報が刻々と保存され続けている。 ■ ネットの「記憶装置」ウェイバック・マシン インターネット・アーカイブを代表するサービスが、膨大なウェブ履歴を保存する「ウェイバック・マシン(Wayback Machine)」である。研究者や記者、市民らが利用する公共アーカイブとして、企業、政府、個人が過去に公開した情報を、削除後も辿(たど)れる形で残してきた。 同マシンは単なるスクリーンショットではなく、HTML・CSS・JavaScriptなどの技術構造ごと保存することで、元サイトが消失しても「当時の状態を再現」できる点が特徴だと、責任者のマーク・グラハム氏は語る。 しかし近年、保存の難易度は急速に高まっている。 政府の方針変更で大規模なサイト削除が行われたり、生成AIの普及により「どこまでが実在し、どこからが人工生成なのか」という境界が曖昧になりつつあるからだ。さらにコンテンツは有料化・閉鎖化し、AIチャットボット内で完結する情報取得も増えている。 この変化の中で、アーカイブはウェブだけでなく AIが生成した回答や検索結果の要約も記録対象に加えた。日々ニュースに合わせて数百の質問をAIに入力し、そのプロンプト(入力文)と出力の両方を保存する試みが続いているという。 ■ 創設者ブリュースター・ケールの理念 アーカイブの精神的支柱は創設者の ブリュースター・ケール(Brewster Kahle) 氏だ。取材に応じたケール氏は、旧教会を購入した理由を「組織のロゴにも似ているから」と笑うが、真意は「永続性の象徴」にあるという。 彼が理想とするのは、古代エジプトのアレクサンドリア図書館だ。「人類の知をすべて集める」...
https://www.asmrchurch.com/journal/48
No comments:
Post a Comment