
エホバの証人がなぜ危険なのか? 2025-11-01 確信と共同体、そして恐れが人を縛る 宗教が人生の支えとなることは多い。だが時に、その「支え」は人を強く縛りつける枷(かせ)ともなる。アメリカ出身のライター、レーン・G氏は、自身が幼少期から成人まで「エホバの証人(Jehovah’s Witnesses)」の内部で育った体験をもとに、「なぜ人は高支配性の宗教集団に惹かれ、そこに留まり続けるのか」を分析した。 幼少期の記憶と「温かな共同体」 著者が初めてその世界を意識したのは七歳のころ。王国会館の柔らかなベンチに腰を下ろし、整然とした会合が始まるのを待っていたという。周囲の大人たちは穏やかで、知的にも見えた。外部の人々が「カルト」と呼ぶような印象はそこにはなかった。 著者はあえて「カルト」という語を避け、「高支配性グループ(high-control group)」という用語を用いる。なぜなら、エホバの証人を運営する「ものみの塔(Watchtower)」が法的にも議論を呼ぶ存在だからだ。しかしその支配構造と心理的拘束力の強さは、カルトと呼ばれる集団と本質的に変わらないと指摘する。 「確信」を与える宗教 では、知的で善良な人々がなぜこの組織に惹かれるのか。 第一の理由は「確信」である。人生の意味、死後の行方、なぜ苦しみがあるのか──古来からの問いに、ものみの塔は明快な答えを与える。曖昧さのない教義は不安定な現代社会において安心感をもたらす。 第二の理由は「共同体」である。興味を示した人が初めて会館を訪れれば、笑顔で迎えられ、家族のように扱われる。会合の後には食事に誘われ、専用の聖書を手渡される。孤独な人ほど、その温かさに心を開く。 第三の理由は「宇宙的使命感」だ。信者は自らを「神に選ばれた民」と信じ、地上の楽園を準備する聖なる使命を担うと教えられる。布教活動は「命を救う仕事」と位置づけられ、拒絶されても「神がまだその人を動かしていないだけ」と解釈される。目的意識と仲間意識が、挫折を希望に変える装置として機能する。 「なぜ離れられないのか」 多くの人が疑問に思うのは、こうした組織からなぜ脱出できないのかという点だ。 その鍵を解くのが、心理学者スティーヴン・ハッサン氏が提唱した「BITEモデル」である。 これは支配構造を「行動」「情報」「思考」「感情」の四要素で説明する...
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