Saturday, February 5, 2022

「給与で会社を選ぶ人とは働きたくない」投稿について

人事の大塚さん@株式会社ノースサンド というツイッターアカウントで、

給与で会社を選ぶ人とは働きたくない

という投稿が炎上した。

個人的な感想としては、

これに憤るのは、明らかにお門違いである

とおもう。理由は以下:

1. そもそもこの会社がスタートアップであるということ

2. 個人の発信は組織の発信、は「宗教」

3. コンテクストが無視されている

4. SNS特有の脊髄反射(低学習コスト、高アウトプット)

はっきりいってもうこういう炎上事象自体がうんざりなのである。SNSで誰かの粗を探して、コンテクストの中の切り取られた発信を拡散して、いい年したオッサンがよってたかって集団リンチ、という地獄絵図が。

1. そもそもこの会社はスタートアップである。

スタートアップっていうのは、私も何社か経験したが基本生まれたてというか何もかもが整っていない。中で働いている子達は基本若い子たちで、そんなに社会経験もないことが多いし、制度やらコンプライアンスを整えている暇なんてない。資金繰りだってめちゃくちゃ大変なはずである。内部留保だって、がっつり貯めるような余裕はない。役員は自分の給与を0にして、それでも収支がうまくいかず社員の給与を払えず遅延してしまう・・・みたいなことも最悪ありうる。スタートアップにいても、もちろん給与交渉をするのはいいと思う(私も事実がっつり給与交渉をした)。それでも思い通りにならなければ、すっぱりやめて他の企業に転職すればいいだけの話だ。

多分、大塚さんの言いたかったことは「現段階の我社で、売上に十分即時に貢献できる明確な根拠もない(=新卒だから教育コストもかかる)まま、受け身で、ただ固定支出としての給与だけ高く求めるようなのはありえんだろ」という話で、これってスタートアップではわりと当たり前の話だと思う。24時間、寝袋つきで、アパートの一室で毎日人の2倍3倍働く世界線だ。

私個人はそれでもやっぱり給与はあげないと気に入らなかったので転職した。

まあ総じて、スタートアップっていう特殊な条件で、固定費バンバン増やしなさい、でも日本は正社員クビにはできませんってそれ破産しろってこと?って当事者は思うだろうし、炎上に加担して怒ってる人たちってスタートアップで働いたこと本当にある???と思ってしまった。(何度もいうが正社員をかんたんに雇用調整できるなら話は別)

2. 個人の発信は組織の発信、は宗教

もういい加減こういうのが宗教だって気づこうよ、と思う。日本自体が傾いているときに日本社会のデファクトの当たり前など1ミリの価値もない。

スタートアップといういい意味でも悪い意味でも未熟な若者たちの集まりにギッチギチの大人の常識やモラルを押し付けて全員でリンチするっていうのは、ようは「若い芽はつみます、失敗を恐怖体験にするカルチャーを浸透させます、新しいことに挑戦するよりも玉虫色で人当たりよく失言を一個もしない特になんの尖った能力もない人間を最適解にします」ということでこれも詰んでいるとしか思えない。

はっきりいって、インターネットに関連するオッサンたちの常識は唾棄すべき愚論が多く、3年後には嘘に転ずるようなパラダイムが多い。

何度もいっているが、かつて「ネットで顔出しはリスク」であった。それを誰もが口を開けばなんとかの一つ覚えのように常識として疑いもしなかったのだ。

今は猫も杓子もがユーチューブで顔を出している。常識は変わるのだ。

日本人の土着の信仰なんか誰も興味ないのだ。もちろん神道とかは尊いけど、ましてネット上でああすべき、こうすべき、実名がどうのこうのとかナンセンスな廃棄物としか思えない。常識信仰によって日本の凋落に加担することはしたくない。個人の発信をどのように受け止めるか、は受け止める側のリテラシイの問題であって、発信側が顔の見えない「神様」のご機嫌を伺うことではない。

WeWorkみたいな事件性をともなうものならまだしも、この程度の発言で燃えるというのは「日本人」であるリスクであって、実名のリスクではない。(論点がずれている)

3. コンテクストが無視されている

コンテクストが無視されている。そもそもどうして彼女がこういう発信をするにいたったのか?それはおそらくは何かしらの刺激に対する反応であって、事実おそらく給与について詰めてくる志願者に嫌な思いをさせられた・・・・(なにか捨て台詞を吐き捨てられたなど)可能性がある。

だから100%正義のがわにたってこういうアカウントに攻撃するというのは愚の骨頂であって、なぜこの発信にいたったかは当事者でなければわからない。

また、スタートアップの空気として「自分が弱い立場になったら終わり」「なめられたら終わり」という感覚を持っている人は多く、自分を大きく見せざるをえない状況はある。もちろん過度な一般化はしないが、そういう人は私の経験上少なくなく見受けられた。

そういうのを「炎上させて」潰すことを「おっさんたち」が成功体験にしてしまうと、日本のスタートアップがどんどん萎縮していくんじゃないか、とさえ思える。

4. SNS特有の脊髄反射(低学習コスト、高アウトプット)

結局問題の本質は、(この企業に限らず)内容をよく吟味せず、コンテクストや関連する情報を丹念に集めず、切り取られた刺激的なテーゼ(命題)に対して鬼の首を取ったようにマウントを(正義の名目で)とるようなマインドセットであって、事象について「低学習コスト」で高アウトプット「たくさんを決めつける」という知的な怠慢であり、

デマゴーグの本質である。

まあ以上の理由から、もちろん私個人は給与を一定の基準満たさない会社には応募もしたくないし一緒に働きたくもないと思うが、それはあくまで相性の話であって、この会社の落ち度ではない。

結局市場は需要と供給なので、応募者がいなければ給与は上げざるを得ない。また、日本の政策としてダウンサイジングをかんたんにできる方向に(それはある意味で無能はかんたんに淘汰される、ということになるが)舵を切れば、もっと給与はあがるよ・・・ということで

多くのオッサンがふりかざす「常識」とか「こうこうしないとやばいよ」的なものは「日本人の」「土着民族信仰」である場合も多く、全部真に受ける必要はないというか(むしろそれに普遍性があれば日本もっと成長してる)

この手の炎上はナンセンス、かつくだらないな、と思いました。(日本人であることをリスクにさせないでくれ・・・・)


まあそんなかんじで。

スタートアップにおいて、受け身な人材はありえない(ツイッターで叩いているような人含め)という極めてシンプルで当たり前な事実を、もう少しみんなわかったほうがいいと思いました。

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