Thursday, May 2, 2019

小説ごっこ2

クリスは光化学銃を何丁か倉庫から持ち出した。僕ら同盟軍がバリサン軍に勝つのはほぼほぼ不可能だとされていた。

議会は現状トロカス区、インファ区、ホウサン区の3区域での戦闘において、死者がアンドロイドも含め2500人にのぼったことを踏まえ、一時退避を決定した。

確かに、敵は圧倒的だった。グリアシールドという次元を歪ませる装置によって一時的にこちらの攻撃を無効化したり、空間転移によってこちらの部隊は撹乱され、15分程度で1000人が死んだ。あまりの戦闘力の差は、歴然であった。

戦闘力という表現の仕方はもしかすると語弊があるかもしれない、技術力の差だ。同盟軍には驕りがあった。また、バリサン軍はじめ、 テト軍、ホンダニア部隊、ラッス教徒などをおもにテロ組織扱いし、こちらの最新型戦闘機マルミーノでほぼ殲滅できるとして疑わなかった。

確かに、マルミーノは強力な戦闘機で、10年前から叶う相手はいなかった。というより、この新規戦闘機のおかげで我々の領土はシンア時代の6倍まで拡張し、現地の植民地化にも成功した。ここでおいしい思いをした同士も多かった。

敵は絶対に自分たちよりも格下だということが事実実証されていた。その実証は、歴史とか実績ということで、そのことにより同盟軍の人海戦術における技術や訓練というものはみごとに廃れた。一部それを民間の紛争を解決する技術として転用、維持する組織や同盟軍のなかでもセクションがあったものの、それらは決してメジャーになることはなく、事実兵士の訓練内容はおもに戦闘訓練から座学にシフトした。

そもそも、マルミーノは戦闘人型アンドロイドPP52を10000体まで搭載できる優れものであった。これは故リンバル博士が考案したもので、これは我々の戦闘能力を大きく進歩させた。


通用していたんだ、実際

 ただし、やはり陳腐化という問題があった。マルミーノの技術やノウハウは、宇宙中のハッカーによって流出が試みられた。これらは機密情報に該当するのでもちろんDMZにおかれていたし、トポロジー的にみても絶対にもれるはずがない、との政府の公表があったが、事実は違っていた。マルミーノ開発セクションの中の技術者の一人、ゼンコン・マイマル・プワが実は
インファ区の出身で、彼が内部情報をリークした。それに加え、バリサン軍はマルミーノをはるかに凌ぐ技術である空間転移術を開発し、これがほぼキラープロダクトとなったであることは間違いがない。

僕は同盟軍の兵士として、同盟のために命を捧げなければならない。これは、僕の家族や友人の穏やかな生活を守るためである。彼らの命をまもるのは、僕しかいない。

クリスも同じである。 光化学銃なんてはっきりいってバリサン軍の空間銃に比べたら全く意味がない。空間銃は、敵の特徴を銃のポインタに自動学習させて8KTBあるDBの画像データやパターンをもとに自動で敵の存在する時空間を乱数を加えてバラバラにする。

そうすると敵は必然的に一瞬でバラバラになり、そもそも何かを命中させる必要すらない。

クリスは敵から隠れて奇襲作戦をしようとしているが、はっきり言って無駄だ。サーモグラフィーで見つかってしまう。技術の違いはあまりにも残酷だ。

僕は投降をしようという思いが頭をよぎったが、降参したとして、家族が無事である保証は一切ない。宇宙では、そもそも国際法などというものは存在せず、これまでの第4次宇宙戦争までの歴史をかんがえると、まず期待しないほうがいい。

僕はおもむろに立ち上がった。

なんとか敵陣のなかのトロいやつをさがしだし、空間銃を取得する。

僕らが退避したとしても バルサン軍は攻めてくる。なんとか今のどさくさに紛れて家族と逃げるのもありか。

わからない。僕は頭を抱えた。


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