Saturday, September 8, 2018

ラバーダッキングとは何か。



僕がざっとネットで目を通した限り、ラバーダッキング(Rubber Duck Debugging)についてきちんとわかりやすく述べられた日本語の記事がなかったので、ちょっと書いてみようと思う。(そして往往にして日本語の記事は量が少なく、しょぼい。)

 そもそもの発祥は90年代後半、Andrew HuntとDavid Thomasによって書かれたプログラマ向けの指南書の中で登場した概念で、ざっくりいうと以下のようなものだ。

プログラマはアヒルのおもちゃを持ち歩く。そして、問題が起こったとき、自分の考えを整理するために、そのアヒルと会話する、ということだ。

自分の考えを整理する、ということはさらっと言ってしまうとなんでもないように思えるが、これをできる人は結構少ない。

問題(バグ)が起こったとき、それを解決するための解法を正しく導く、というのは意外と誰にでもできることではない。多くの場合、間違ったやり方を絶対視し、それが固定観念になっていて、それで回っているように見えるが単にリソースを浪費しているだけである。

。。。。

と、ネットで書かれているのはここだけで、とても浅いようにも思えてしまうのだが、僕はこれをもう少し拡張して解釈している。

 よく、欧米をモデルにするのは見当はずれだ、みたいなことが、「欧米では....」のカウンターとして用いられてきた。これは、ある側面では正しいケースもあるが、我が国の社会における下方硬直性を浮き彫りにする試みから逃避する、ということも意味しているようにも思える。

僕は以前 Swarm Technologies Inc., (Polyswarm) という会社でデベロッパーをしていて、サンディエゴのシェアオフィスで働いていたこともあり、感じたことがある。

1. オフィスの雰囲気がとにかく良い。
2. オフィスにスターウォーズのおもちゃとかがたくさん山積みになっているセクションがある。見ていて面白い
3. みんな定時には帰る(もちろん仕事はできるし頭もめっちゃいい)
4.  仕事の後はみんなで遊ぶ
5.  人間関係は基本いい
6. オフィスに面白いポスターを張り出す
7. 全体的に遊び心がある
8. 家族の写真とかデスクに置いてる人がちょくちょくいる



みんな定時で帰るからそんなに仕事できないのか?というとその考えは甘い。基本、アメリカの企業は結果を出せなればすぐクビを切られる世界だから成果主義だ。

僕の中でラバーダッキングと関連づけられる米国企業の特質としては、1. 2. 6. 7. 8. あたりである。

魚がきちんと泳いで特定の目的地にゴールするためには、良い水槽が必要だ。つまりエコシステムがボトルネックとなる。

「いつも視界に入るもの」
「いつも感じる匂い」
「いつも触るもの」
「いつも耳に入る音」

これらは、大げさではなく、生産性にものすごく関係がある。例えば机の上が散らかっているということは、その人の頭の中もしっちゃかめっちゃかになっている、ということを示す。

クリエーターの場合、漫画家とか多少それがプラスになることもあるが、多くはマイナスだ。(その人がダメ、とかそういうことではなく、その人が現状強いストレスに晒されていることを暗に示唆している)

 常に怒号が飛んでいていいのは、調理現場とか工事現場とか、基本ホワイトカラーの仕事ではない。

ホワイトカラーの世界では、どうやったら楽しく職場にこれるか。どうやったら「明日も仕事に行きたい!」と思える環境を作り、維持するか、が致命的な勝敗の分かれ目となる。

みんなで行う楽しいイベントはあるか。

レクリエーションはあるか。

各々が、なんらかの形で毎日自己実現できているか。

快適か。人間関係とか雰囲気に問題はないか。

ということを、僕の知っている欧米企業は基本絶対に外さない。

 我慢しに職場に行くような感じだと、いい仕事は絶対にできない。

そんな職場は今すぐ去るべきだ。


では、その楽しさはどう作るべきか。


1. まず、いい雰囲気を作り、維持すること。
2. ストレスの逃げ道を設置すること。(Tranquilizer 緩衝材)
3. 常に目につく場所に、楽しいものをおくこと


サンディエゴのオフィスの場合、

1. 広いオフィス、全員のプライバシー、お菓子
2. かわいい女性社員?定時に帰れる仕組み
3. スターウォーズの山住みのおもちゃ、家族の写真

 で、ここから本題である。

ラバーダッキングはオフィスにおいてなんの意味を持つか?


ラバーダッキングをほわほわのむうみんぬいぐるみに置き換えてみよう。


 すると、ほわほわむうみんは 2. 3. をカバーする。

ぬいぐるみや、ペットなど、小さい柔らかいものに触れたり触ったりすると、多くの場合生体のストレス値は劇的に下がる。(Tranquilizer)

また、ストレスもそのぬいぐるみを媒介にして、逃がすことができる。(というのは、複雑になってしまった思考回路を一旦赤ちゃんにまでバラして分解することで、ストレスや悪いものを「捌けさせる」ことができる)

タイのオフィスの場合は職場に犬を連れてくるHRもいたくらいで、それくらいのムードとか乗りの方が、会社としては結果を出す、ことが多いような気がする。


まとめると、

ラバーダッキングとは個人の思考の整理の手段だけではなく、ストレスの緩衝材、また労働者の生産性やモチベーションの低下を防ぐ効果が存在する。

能力が低い人を前提にするとルールや規律ばかり多くなって結果できる人はどんどん去って行く環境になる。それを短期的な結果を得るために「よし」とするか。(某グルメ会社では入社社員のSNSを規制したり脅すようなことを告知したりして、結果見事業績は大幅に落ちている)

それとも 能力が高い人を前提にエコシステムを組んで、よりできる人がどんどん集まってくる快適な仕組みを作り、中長期的に勝つか。

答えはむうみんが握っている











義務、責任、滅私奉公、短期的結果、ではなく

IQ、楽しさ、ワクワク、で回していかなければ、 時代においていかれ、淘汰されてしまう。

 
それに、絶対後者の方が 誰にとってもハッピーに決まっている。自分の力を最大限発揮できるわけだから

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