Tuesday, June 14, 2022

Saturday, June 11, 2022

小説「3」

 悲しい事実ではありますが、第三次世界大戦が勃発してはや半年です。

報道機関なども軒並み消滅しましたし、地上の大半が核ミサイルによって消滅しました。

シェルターに残された数少ない人類が我々・・・

統計などとりようがありませんが、おそらく人口の9割が消滅したでしょう。

唯一無傷だったのはマダガスカル・・・という情報も入っております。

情報というより、確度としてはほぼ噂・・・以外の域を出ませんが。

今回の世界戦争の覇者はいなかった。

そして、それぞれの核ミサイルが、それぞれの相手国を消滅させ、ドミノ式に暴力が暴力を生み、

まあこれが人類史の「終焉」に相応しいでしょう。

食料ももうありません。

私の家族は無事このシェルターに連れ込みました、

というより、本当に数分の判断で「間に合った」のです。

これも全て私のパラノイアな性格が幸いしたのでしょう。


放射能によって5m級のゴキブリが這いまわっているのを見ました。

生態系が異常な変化を遂げており、ほぼ我々の思いつくような動植物はおそらく絶滅したと思われますが、

昆虫だけはたくましく生きているのをみると、我々も結局は食物連鎖のカーストの「敗者」ということでしょうな。

シェルターの中の衛生はお世辞にもよいといえるものではありません。

水はありませんし、ほぼ半数は病気にかかっています。

この段階になって、不信仰だった私も神の存在に縋りつつある。

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デリメル大佐からの指令を受け、某国に核弾頭を打ち込んだことは確かです。

キューバ危機では当事者の果敢なボイコットにより冷戦の最悪のシナリオは避けられましたが、今回はダメだったようです。

やはり、世界平和とか、調和というのは「おままごと」だったのでしょう。

そして、何よりも衝撃的だったのは把握している以上に、数多くの中小国家が核弾頭を所有していたことです。

そしてN×Nの核ミサイルの応酬が重なり、地上から人類はほぼ絶滅しました。

私も、いさぎよく、自決するつもりです。

ああ、自決は日本のサムライの思想でしたね。

彼の国では、それは「名誉」のため・・・だとききますが、おそらくは「集団心理」が「個人の意思」を塗り替える強力な圧力でしょう。

「真面目」であるということはときに危険なことです。

「真面目」であることは、つまり「周りに合わせる」ことが行動基準の核になっているということは、

「ナチス」がお上になれば「ナチス」として「真面目」に機能するということだ、

そして私はこのスイッチを押した。

多くの女子供を火だるまにした。

私は、私が憎い。



Thursday, June 2, 2022

短編小説「明美」

 答えなくていいと思う」

明美は、喉元まででかかった不安を押し殺すようにして、やっとの思いでこの重圧のかかった沈黙を破った。

彼女がこの仕事を始めたのは、単に生活をするためだった。DV被害者の救済。田原代表の務めるこのNPOに彼女が参加したのは、1998年の頃だった。

「トシさんは、私にしか打ち明けない弱さがあって・・・トシさんはね、弱い人なのよ・・・それで去勢を張って、それで、感情が止められなくなってしまうのね」

八つ当たり。

男女間の関係というのも人間関係だから、それは長い時間をかけて醸成されるものもあれば、ジェットコースターのようなものもある。

「暴力を振るう側の男」という一つの悪魔化された図。

または、この悪魔化された図を揶揄することによって「暴力を振るう側」を正当化しようとする狡猾な心。

そういった、それぞれの猜疑心や、またはエゴが蠢く、そういう救いようのない現場が私のみてきたものなんだ・・・

明美は思わず小さなため息をついた。

「それで、その緩み・・・許しで、それを繰り返すことであなたは下に見られてきたんじゃない。敦子さん、それでまた彼をゆるしたら、あなたはまた傷つけられることになるでしょう」

敦子さんは、ついにエスカレートした内縁の夫の暴力によって、眼窩複雑骨折・鼻の骨の骨折・・・という段階にまで達していた。

「警察沙汰」

であったが、敦子さんが夫である「トシ」に忖度をし、被害届を出さなかった。

精神的隷属。

つまり、そういう「優しさ」とか「誠実さ」といったものが、「武力」に裏打ちされていない時、私たちは「暴力者」の「お目溢し」を受ける以外に、生存の手段はないんだ。

トシさんの顔色を伺いながら。

暴力に震えながら。

「でも・・・あの人がたまに買ってくれるラベンダーの花がね、それを見たら私、今までのつらいこと吹き飛んでしまう気がして」

「精算」

「そういう冷たい言葉であの人のこと表現しないで」

ああ。

私は外野か。

結局、「人助けをしている」私に、私は酔っているだけか。

良かれと思って。

私は、あなたからトシさんを取り上げる「悪い人」に、なっているのかもしれないわね。

「わたしが」

きっと、あなたに、敦子さんを「助けている」っていう「絵面」を、私自身で消費して、私は自己愛を満たして・・・私は、あなたのことを利用していたのかもしれない。

私は、これっぽっちもあなたのことを考えていなかったのかもしれない。

そう、私自身がこのNPOに入って活動したのも、もちろん私自身がDV被害を受けたこともあったし、

それは言葉によって相手を「小さい檻」に入れるのが「巧み」なあの人によって、「モラハラ」を受け続けた、

でも、やっぱり我慢しなさい、我慢するのが女の子でしょって、

わたしんちは古風だから、そう言われてきたのよ。

そう、

そして、首をつって死ぬまで我慢し続けるんだ。

誰にも言えないまま。

「わたし・・・・明美さんには感謝しています」

「でも、やっぱりトシさんのところに戻るのね」

「はい!」

・・・・・なぜ?

私は目の奥に熱いものがこみ上げると同時に、敦子さんに対しての・・・まるでこれまでの「感情移入」、つまり自分自身と同一化させていた心理状態から「引っ剥がされた」ときの反動としての「憎悪」・・・・

そう、わたしは敦子さんに「憎悪」していたんだ。

「へっ、トシに殺されちまえよ」

私の中の一部が、そう私の中で囁いた。

私の中には、複数の人格がいる。

そして、たぶん・・・・これはふつうのコトなんだ。

相手を罵り、危害を加えようとする自分。

それを制止し、相手を守ろうとする自分。

自分を責め、自分を傷つけようとする自分。

いろんな自分が蠢いていて、それらの牽制のしあい・・・が

「私の人格」だ。

明美はそれを確信した。


12月3日、

敦子さんは帰らぬ人となった。

原因はトシ・・・により複数箇所を出刃包丁で刺されるという結末で、

私は複雑な思いを抱えたが、


やはり人は死ぬんだ。

これは・・・敦子さんのケースは、これは真新しいものではないんだ。

人は罪深い。

そして、ある人は死に、ある人は生き残る。


明美は静かに、ドアを開けた。


東村山税務署で「凄い」対応をされた話

(今日はまともに対応してもらったので、許す!)